ささやかな日常

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恭史 side ガレージ本田 二輪店 「瀬梨花(せりか)ちゃん こんちはー!」 「ああ、やっちゃん。昼?」 「うん。弁当食っていい?」 俺がそう言うと、瀬梨花ちゃんはクスリと笑った。 「いいよ。コーヒー飲む?あ、お茶のがいい?」 「うん。お茶で。」 俺が弁当の包みをほどいていると、親父(おやっ)さんが顔を出した。 「おう。恭(やす)。」 「ちース。」 「ここは食堂じゃねぇぞ。」 笑顔で親父さんが言う。 「仕事場で食ってると、落ち着かなくて。」   「冗談だ。ゆっくりしてけ。」 「あざース。」 「はい。お茶。」 「ありがとう。ん?」 「梅こぶ茶。コーヒーか緑茶だとレパートリー無くて飽きちゃうのよね。」 ずーっ と一口飲む。 「はああ…ほっこり。」 瀬梨花ちゃんは呆れた様に笑うと 「仕事は忙しいの?」 と聞いて来た。 「今日は それほどでもないよ。」 俺の日課は、瀬梨花ちゃんの所で 弁当を食いながら、他愛も無い話をする事。 至福の時だ。 「恭。今日、ヒロちゃん来てるか?」 「あ、はい。居ますよ。」 「軽トラが車検なんだ。代車も頼むって言っておいてくれるか?」 「解りました。」 残ったお茶を飲み干すと、空になった弁当箱を包み直した。 「瀬梨花ちゃん、ごちそうさま。」 「うん。車検頼むね。」 「はいはい。了解です。」 俺は笑顔で軽く手を振ると、店を出た。
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