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その日は朝から冷たい雨が降り肌寒かった。
大池が店に来なくなって一週間。未だ連絡は一切ない。
今日もきっと来ないだろうと思いつつ、もしかしたらと期待も込めて店の鍵だけは開けておこうとドアの前に立ちカギをあける。
するとすりガラス越しに人影が見えて、咄嗟にドアを開けばそこに大池の姿がある。
「大池!」
江藤と顔を合わせるなり逃げるように雨の中に飛び出してしまう。
「待って!」
その後を追いかけようとした江藤だが、慌てていた事もありぬかるんだ場所に足を取られて転んでしまい、水たまりの中へと頭からつっこんでしまった。
かっこ悪い。
のろのろと身を起こし泥だらけになってしまったシャツにため息をついて。きっともう大池は居ないだろうと顔を上げれば。
「江藤先輩、大丈夫ですか?」
と、手を差し伸べる大池の姿がすぐ傍にある。
「大池」
泥だらけの手で掴むと引っ張ってくれて、起ちあがった江藤はそのまま喫茶店ではなく住居スペースのある二階へと大池を連れて行く。
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