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大池からのはじめてリクエストは「チョコレートクリームがたっぷりはいったパン」だった。
パンを割った瞬間にとろりと流れるクリームに、目をきらきらさせて見せる。
「凄い」
手についてしまったクリームが手首を伝ってシャツについてしまいそうになって。
あわてて布巾でそれをふき取れば、むっとした表情で江藤を見る。
「勿体ないです」
そこまでチョコレートが好きなのかと思い、子供っぽいその姿につい笑みを浮かべてしまう。
「悪かった」
じっと江藤を見て。
「折角、江藤先輩が俺の為に作ってくれたパンなんですから」
頬を赤く染めて言う大池から熱が伝染する。
「お前がそんな可愛い事を言ってくれるようになるなんてねぇ」
江藤は照れ笑いを浮かべ、大池の唇に触れて口内を味わうように舌を絡ませれば、仄かに甘いチョコレートクリームの味がした。
「うん、美味い」
自分で作ったチョコレートクリームも可愛い大池も。
こういう事に不慣れな大池は恥ずかしさを隠すようにパンを食べだす。
チョコレートパンが甘いので、今日は砂糖の入っていないミルクたっぷりのカフェオレを一緒にいれてあげた。
そのカフェオレを一気に飲み干し、一瞬、苦かったのか眉を顰め。カップをテーブルに置いて一呼吸。
そして、大池からカフェオレ味の口づけのお返し。
ほんのり甘さを感じるその口づけに、江藤は大池の腰へと腕を回してその身を引き寄せた。
【菓子パンと後輩の彼・了】
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