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甘党な男達と先輩後輩
たまたま江藤が外に出ていた時、恋人が自分の店を素通りしようとしていたから思わず声を掛けた。
なのに何故声を掛けたんだと言わんばかりの顔をする大池に江藤は戸惑ってしまう。
朝、大池を送り出した時はいつものようにいってらっしゃいと口づけしあった。
自分の気が付かぬ所で大池を怒らせるような真似をしてしまったのだろうか。
落ち込みそうになる江藤の耳に、
「大池さん、お知り合いですか?」
と、大池の後ろからひょっこりと顔を覗かせる。
大池の知り合いか。
興味ありげにその男を見る江藤に、あからさまに顔を顰める大池。
何も答えようとしない彼の代りに江藤が答えた。
「前、同じ会社に勤めてたんだ」
「そうなんですか」
男は真野と名乗り、中途採用で一カ月前から働いているのだという。
「なぁ、寄って行かないか?」
「申し訳ありませんが、すぐに社に戻らないと……」
という大池の言葉にかぶせるように、
「良いですねぇ。実は、昼休憩まだだったんですよ」
お腹すきました大池さんと、お腹をさすりながら大池を見る真野だ。
「腹が空いたのくらい我慢しろ」
帰るぞと真野を連れて立ち去ろうとする大池だが、
「良いじゃないですか。ちょっとだけ」
と大池をすり抜けるように方向を変えて喫茶店の中へと入っていく。
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