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「真野っ!」
珍しく感情を露わにしている大池の姿に、良いモノを見せてくれたと真野に心の中で拍手する。
「ほら、大池も中に入れよ」
ぎゅっと手を握りしめて引っ張れば、眉を八の字にしながら江藤を見る。
「会えて嬉しいと思っているのは俺だけか」
と耳元で囁けば、すこし表情が和らいだ。
カウンターの席に座り、真野は珈琲とパンを大池は紅茶を頼む。
「飯食わないんですか?」
「あぁ」
昼食を摂ると眠くなるからという理由があり、仕事のある日は食べない。その理由を知っているのは江藤だけで、まだ同じ会社に勤めている時に昼に誘っても断られていた理由はこれだったのかと、なんて可愛い理由なんだと胸がきゅんとした訳だ。
「はい、珈琲と紅茶。あとパンね」
今日はクロワッサンで、ジャムを四種の中から好きなものを選んでもらう。
「わぁ、おいしそう。あれ、このパンは?」
これは大池の表情を引き出した真野へのお礼だ。
「クリームパンなんだけど、甘いの平気?」
「はい。大好物です!」
なんとなく真野は甘党ではと思っていたがどうやら正解のようだ。
カスタードクリームとホイップクリームの入ったパンは真野も気に入ったようで美味しいと顔を綻ばせた。
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