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大池が喫茶店へと来るようになったのは江藤の送別会の日の事だった。
滅多に飲み会に参加しない大池が居るだけでも江藤にとっては驚きだったが、
「あの、もしお時間が大丈夫でしたら、この後つきあってくれませんか?」
と誘われたのだ。
送別会が終われば大池とはこれっきりになるだろうとそう思っていたので、誘われた事がすごく嬉しくて何度もうなずいてしまった。
実は大池に恋愛感情をもっていた。
はじめの頃は仕事の話以外しない大池の事は後輩としか見ていなかった。
だが、真面目で仕事熱心なその姿にいつの間にか目が離せなくなり、そして気が付けば好きになっていたのだ。
もっと仲良くなりたくて仕事以外の事を話しかけたり飯を食いに行こうと誘ったりもしたがあまり良い反応はなく。
きっと仕事以外では付き合う気がないといいたいのだろうと江藤はそう思っていた。
それだけに最後の最後に巡ってきたこのチャンス、大池との関係がこれっきりにならないようにしたい。
黙って前を歩く大池について行った先にあったのは小さな焼き鳥屋さんで。それも行きつけ店らしく顔を見るなり女将さんが大池の下の名を呼んだ。
「あら、今日はお連れさんもいるのね」
「会社の先輩です」
カウンター席に座ると上着を脱ぎ、江藤にビールでいいかと聞いてくる。頷くと女将にビールを注文し、ほどなくして目の前に瓶ビールとコップが二つ置かれ大池がコップについでくれる。
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