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大池が参加した数少ない飲み会でも酒を呑んでいる姿は今まで見たことはない。その飲みっぷりの良さから相当酒が好きな事が解る。
「てっきり酒は苦手なのかと思っていたぞ」
知っていれば飲みに誘ったのにと言えば、
「飲める事をあまり周りに知られたくないので」
とそういわれてしまった。要するに飲みに誘われたくないと言いたいのだろう。
大池の言葉に落ち込みそうになったが、それを振り払うように首を振り気合を入れなおす。
折角、二人の飲んでいるのだ。落ち込んでいる場合ではない。
「江藤先輩、何にしますか?」
目の前に置かれているメニューを指さし、どれにするかを尋ねてくる。
「そうだな、これにしようかな」
「解りました。女将これとこれを」
メニューを指さして注文を終え、江藤は大池に話しかけるが感心が無いのか会話はすぐに終わってしまう。
折角二人で飲んでいるのに気まずい空気が流れだし、どうして誘われたのかが解らなくなってきた。
「大池、なんか俺に用事でもあったのか?」
その言葉に大池は江藤を真っ直ぐに見つめたまま、何かを考えているようで、
「そういえば……」
と話し始めたのは仕事の事で。江藤から引き継いだ得意先の事だ。
最後だからと変わらない、なんとも大池らしいと思いながら酒を勧めつつ話を聞いた。
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