516人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
呑ませ過ぎた事は否めない。
江藤は酒にめっぽう強い。そんな彼と同じペースで飲み続けた結果、ダウンしてしまった。
まさかこんなかたちで大池をお持ち帰りすることになろうとは。
酔った大池を部屋まで運んでベッドの上に寝かせ、苦しくないようにネクタイとシャツのボタンを2つ開けてベルトを外す。
無防備に眠る大池は可愛いくて普段とのギャップにドキドキしてしまう。
後ろへ流して固めた髪を崩したらもっと可愛くなりそうだ。
弄ってみたくなって手を伸ばしたその時。
「えとーせんぱぁい、やめないでください……」
体を丸め布団を抱きかかえて眠る大池の寝言に一瞬理性が飛びそうになる。
会社を辞めるからとあいさつをしにいったとき、江藤に対して大池が言った言葉は感情の籠らぬ声で「お世話になりました」とだけ。
そっけない別れの言葉に大池は自分に対して興味がないんだと、改めて思わされた。だから別れは悔い。なのに、ここでそんな事を言わないでほしい。
寝言だけど大池がそんな風に自分を思ってくれていた事が嬉しく、触れようと腕を伸ばしかけてやめた。
相手は酔っ払い。
このまま一緒に居たら大池に対して何をしでかすか解らない。
江藤は寝室から出て居間の床の上へと横になった。
最初のコメントを投稿しよう!