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寝癖だらけの頭でぼっとベッドの上に正座になる大池に、会社で見せるクールさを微塵にも感じない。
「あの……、どうして俺は江藤先輩の寝室で寝ていたんでしょうか?」
寝起きで頭が回転していないようで、身なりは整っておらず外したボタンもそのままでちらちらと鎖骨が見える。
「酔いつぶれたからうちに連れてきたんだ」
普段とかけ離れた大池の姿があまりに可愛くて、つい、じろじろと見てしまいそうになって視線を外す。
「そうでしたか。御面倒をおかけいたしました」
深々とお辞儀する大池に、彼らしいなと思いながら「いえいえ」と江藤も真似をしてお辞儀を返した。
スマートフォンの時計を見て、まだ時間に余裕があるので家に帰りますという。
「お礼とお詫びには改めて喫茶店の方におうかがいします」
失礼しますとそういって立ち上がる大池を江藤は「ちょっとまって」と引き止める。
「なんでしょう?」
一瞬、眉をひそめた大池に、
「なぁ、飯食って行けよ」
と迷惑承知で誘ってみる。
その言葉に黙り込む大池に、やはりダメかと諦めかけた時、
「良いのですか?」
そうポツリと大池が言う。
「あぁ。簡単なもので良かったら」
食べることが好きなので自分で料理もするようになった。
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