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この日ばかりは食い意地の張っていてよかったと自分を褒めてやりたいと思う。
朝食に偉く感動してくれた事を良い事に、
「7時30分までに店にくれば朝食を食わせてやるよ」
と誘ってみる。
「いいのですか?」
それに戸惑う大池だったが、良いからと来いと約束をとりつける。
もっと大池を知りたい。その想いが口から出て言葉となった。
傍に居たいと願った時は遠かったのに、離れた途端に近くになった。
二人で過ごす時間。話す事がなくとゆっくりと流れていくその時が心地よい。
時折、目が合うようになったのも嬉しい事の一つだ。
「江藤先輩、行ってきます」
「あぁ、いってらっしゃい」
いつも丁寧にお辞儀をして店を出ていく大池を見送りカウンターでため息をつく。
関係が進展するわけでもなく変わらない日々。それで満足していていいのかと心の奥の自分が問いかける。
だが告白をしたとしてそれが失敗してしまったらとそう思うと怖くて何も出来なくなってしまうのだ。
折角手に入れた大池との時間を江藤は失いたくなかった。
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