佐野アキが解決しました!

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 ユリは落ち着いたらしく取り乱したことを謝ると、依頼内容について話し始めた。 「あの日は――雨が降っていたんです。酷い雨でした。それでも、私は彼が出かけるのを止められなかった。近くのコンビニだから大丈夫と思って」 「あの日って言うのは何日ですか? ああ、あと出来れば詳細な時間も教えてください」 「え。ええと、今月の26日です。時間は、確か午前3時です。出ていった後に時計を見たので、間違いありません」 「解りました。それでは続けてください。彼に何が遭ったのですか?」 「コンビニに行く途中でひき逃げをされたんです。かなり強くぶつかったらしくて……」 「なるほど。コンビニまではどれくらいかかるのですか? ぶつかった場所の写真などは持ってきましたね?」 「はい。ちゃんと指示通りに警察からの正確な情報も持ってきました。コンビニまでは500mくらいなので数分だと思います。それで、私はしばらく経っても帰らない彼を不安に思い。出ていくと既に警察が到着していて……」 そう言うと、思い出したのかユリは顔を俯けて、また泣きはじめる。手に持っている写真には彼のぶつかった場所が映っている。少し欠けた電信柱が悲壮感を煽っているようだった。  アキは事務所の壁にかかっているカレンダーに目をやり、その日の夜中から強い雨が降っていたことを思い出す。 依頼人の記憶が正しいことを確認して視線をユリに戻した。 「警察は、轢いた車両を探しているとは言いましたが、強い雨風のせいで証拠品も目撃者もいなく、かなり厳しいといってました。それでも亡くなった彼を轢いた人間が野放しになっているのは許せなくて」 「それで私の所に来た。という訳ですね」 「はい。噂で聞いて。その、佐野アキと言う探偵には不思議な力があるって」 「あー、まぁ、その話は置いておきましょう! 早速、ご依頼を受け付けるにあたって、3つの条件はご了承頂きましたよね」  ユリは頷きながら、アキに向かって少し分厚い茶封筒を差し出した。アキは差し出された茶封筒を受け取ると、中身の現金を確認する。これを楽しみで探偵をやってるんだよねぇ。一枚一枚慣れた手つきで数える、その表情は嬉々としていた。 「これで後、5760万円……」
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