第17話

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郁子は、佐々木 まり子にお茶をお出しすると、急いで廊下に出た。 なぜか深刻な話のような、他人の自分が聞いてはいけないような、そんなピリピリと肌を刺す空気が、確かに彼女を包んでいたのだ。 ふと、まり子が訪れる前に思い出そうとしていた事柄が頭をよぎった。 進藤が変わったのは、3年ほど前に息子が訪ねてきてからだ。 10年ちかくも住み込みで勤めていて、郁子が進藤 礼二と会ったのは、その一度きり。確か、あの時も、郁子が関わってはいけない事柄のような気がして、二人が応接間で話している間、庭にある池の鯉に餌をやったり、庭師が世話をしてくれる植木の落ち葉を拾ったりと、とにかく屋敷の外で時間を潰したことを思い出した。 息子はともかく、進藤の神経がギスギスに尖っている気がしたからだ。廊下を伝う足の運びにさえ気をつけなければいけないような重苦しい雰囲気だった。
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