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最初の言葉がなずなとしてのものなのは、むしろ当たり前のことだろう。
ただそれが俺にとっては、身体が痛く感じるほどつらい言葉だっていうだけだ。
中身がなずなのままで、半分夢の中にいるような状態のアキは容赦なかった。彼女の方から俺に近づいてきて、両腕を回してぎゅっと俺にしがみついてきた。俺の胸元があっという間に溢れた涙で湿っていく。何を言うこともできず、その髪を黙って撫で続けるしかない俺に、小さな消えそうな声で囁いた。
「…野上に会いたい」
「アキ」
気がついたら、勝手に口が動いていた。自分の話す声がどこか遠くで聞こえるような気がする。
「お前は、俺のところへ帰ってきたんじゃないのか」
何言ってんだ俺。こんな時に。
こんなにパニックになってる相手にそんなことを言ってどうなる。
頭の中の冷静な部分がそう言ってるが、口に出した言葉は返らない。アキは俺の胸から顔を離し、まじまじと俺を見上げた。ごめん、変なことを言った。気にしないでいい。そう口にするより先に、アキが急に痛みを感じたように表情を変えた。虚ろだった目に光が戻る。我に返ったように、はっきりと頷いた。
「…はい」
それから涙の残る目で俺を真っ直ぐ見上げて、掠れた声で続ける。
「わたし、帰ってきました。先輩」
「うん」
俺たちはどちらからともなく、改めて再度抱き合った。彼女をそっと抱きしめ、言葉もなく頭を撫で続ける。俺にしがみついているアキがそっと顔を上げた。そのまま唇を重ねる。
数十年振りの感触。…ああ、アキ。
俺は彼女の身体を一旦離し、怪訝そうにするアキを手で促して床に座らせる。わけもわからず従った彼女にのしかかるように押し倒し、再び唇を押しつけた。
俺は理性を失った。
夢から醒めたら、思いもよらない状況にいた。
今のわたしの心境について言うとそういう感じだ。
さっきまでの夢か現かもわからない状態の時に、先輩にとんでもないことを言った気がする。あれはいくらなんでもひどいんじゃないか。そう思って謝るつもりだったのにもうそういう状況ではない。ていうか、それどころではない。
先輩がわたしの上にいる。
何でなんで?どうしちゃったの先輩?
さっきまでより余程パニックになりそうだ。だって、先輩がわたしの服のボタンを外してる。はだけた胸を露わにして、胸の先を唇に含んでいる。
…先輩が、わたしにそんなことするなんて!これって現実か。 わたしの妄想か何か?
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