第17章  あの頃(続き)

2/7
前へ
/37ページ
次へ
気まずさと驚きも明白に、凍りついたように私を見詰める彼を前に さすがに更に真意を探るべきか、私も迷いだす。 そして、言いたくなければ言わなくてもいいと言おうとした時、 ふっと目の前の彼が、視線を落としてポツリと言った。 「俺、どうなればいいんだろう」 えっ? 今度、聞き返したのは私。 しかも、益々、彼の心に詰まった不安が分からない。 だから、今度は私が黙って彼を抱きしめた。 私の腕の中で、彼も黙ったまま、わずかに身を預けてきた。 そしてしばらくすると、再び彼が小さく呟く。 「それでも……。あっ、いや、だけど……」 そして、小さく「はぁ……」と声に出して淡い溜息をこぼした。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

45人が本棚に入れています
本棚に追加