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「いやそれ絶対俺のあだ名から決めてるしっていうか鼻フックってそもそもどんなあだ名だよぶるぇぇぇぇぇっ!!」
「「「鼻フーーーック!!」」」
「安らかに眠れ……安眠。じゃないや、アーメン」
「ご、極寒のギャグ……? ハッ、もしやこれはッ!!」
「『精神攻撃』だッ!! 我々は今『精神攻撃』を受けているッ!!」
「に、逃げろ!!」
ダダダダダッ……。
「フン、行ったかクズめ……。さて、大丈夫だったかなお嬢さん。さぁ、私の手に掴まりなさい」
「あ、あなたがMr.バルドヘッド……?」
「おや? もしかして私と初対面なのかね? いかにも、私こそがMr.バルドヘッド。新宿の秩序を守るために悪と闘う正義の──」
「めっちゃ禿げ散らかしてるゥゥゥゥッ!!?」
「誰が禿げ頭じゃゴラァァアアア!!!」
「ぐぇるぽぉぅっ!?」
ズガーーンッ!!!
◇
不正を憎み、不実を忌み、不当な仕打ちに立ち向かう。涙する者には胸を貸し、倒れた者には手を差し伸べる。
そんな心優しき完全無欠のヒーローは、しかし……もういない。
◇
「おう、起きたか」
「うっ、ここは……」
気が付くと、私は見知らぬ部屋でベットに寝かされていた。
その脇で、ガタイのいい男性──というか、Mr.バルドヘッドが、腕を組んでこちらを見下ろしていた。先ほどまでと同じ服を着ているが、ただ一つ、頭にニット帽を被っていることだけが違っていた。
「私の家だ。気絶した君を介抱するために私が運んできた」
「あ、それはどうもありがとうございま……す……?」
「別に気にしなくていい。色々と突っ込みどころが満載なのでな」
「ですよねやっぱりそうですよね」
どうやら彼に超強烈なデコピンをくらって倒れたのは夢じゃなかったらしい。ひどい。あと意識のない女性は勝手に家へ連れ込まないでほしい。
とはいえ、助けられたこともこれまた事実なので深くは突っ込まないでおく。幸い変なことはされてないみたいだし。
いてて、と微妙にまだ痛む頭を押さえながら立ち上がろうとすると、彼に「もう暫くは横になっていたまえ」と押し留められた。
しかし他人様のベッドを占領するのも心苦しいと訴え、結局私がベッドに腰掛けさせてもらうということで折り合いがついた。
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