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「──こんな姿に驚くのも無理はないな」
「『愚か』って……」
と私は鼻白んだ。
「私、あの『熱情大陸』を見て本当に感動したんです。確か新宿を中心に活動してるのは、昔ここで恩人に救われたことがあって、その恩返しをしたいっていう想いと、そうした優しい人たちが犯罪に巻き込まれるのは見過ごせないと思ったからなんですよね? 私、すごく心を動かされて……」
「ハッ! 恩返しやら人のためが聞いて呆れる! それではなぜ今ではMr.バルドヘッドの活躍が新宿外で滅多に耳にしないのか、その理由が分かるかね? それはただ私が──って、なんだこのいいタイミングで」
「インターホン……お客さま、ですか?」
「いや、そうではなくてな……あぁ、いい機会だ。君、少しそこで何にも触れずに待っていたまえ」
「え? でも……」
「待て」
「はい、待たせていただきます」
数段気圧の下がった声に、上げかけていた腰を即座にベッドへ戻す。臨機応変な対応って大事。
そうして膝の上に手を置いて不動のまま待つこと数分、彼が手に茶色い封筒を持って帰ってきた。
「あの、それは……?」
「金だとも。今ちょうど依頼者が来てな」
「お金? 依頼者?」
「フンッ、まぁいい。気が変わった。取材を受けてやる」
「え?」
「だから、取材を受けると言っている。さぁ、なんでも訊いてみてくれたまえ。どんな質問にも答えよう」
「あの、Mr.バルドヘッドさん、何を……」
「金谷だ」
「えっ?」
「私の名前は金谷 昌志という。Mr.バルドヘッドでは長いからインタビューの間はそう呼んでくれ」
「カネヤ マサシ……」
そう言うと、彼はメモ帳を取り出して「金谷 昌志」と書いた。思ったよりも達筆だった。
「もちろん、」と彼が囁くように付け加える。
「仮の名前だがね」
◇
金谷:「どうやら世間の人々は、私が聖人の如きヒーローであるといった誤解を抱いているようだから、それを正すところから始めようか」
──と、いいますと?
金谷:「つまり私が、特にこの力を譲り受けたばかりの頃、いかに愚かで向こう見ずな馬鹿だったかということだ」
──力を譲り受けたとは、一体どういうことでしょう?
金谷:「……このことを告白するのは初めてなのだが、実は私が超能力者である、と言ったら君は驚くかね?」
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