鏡の中の他人

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『あっ、これ欲しいかも』。 『分かりました。これを下さい』。 『…はい。御主人様』。 学校が終わった後に。彼女と一緒に下校をしつつ。道すがらお店を覗いて彼女が欲しがった物を。僕が“お願い”して。お店の人達から譲ってもらう。これが僕と彼女の日課になっています。 彼女は楽しげにお店の商品を見て回っています。 楽しげな彼女の姿を見る事が。僕にとっての幸せとなっています。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― “他人を操れる力”と一言でいっても、様々な種類が存在する。 気味の悪い笑顔を浮かべながら。私の様子を見ている男のように。不特定多数の人間に“お願いをする”能力の持ち主も居れば。私のようにたった一人の異性の思考を操れる力の持ち主もいる。 『あっ、これ欲しいかも』。 『分かりました。これを下さい』。 『…はい。御主人様』。 私は一人の異性の思考を操れる力があれば。それで事が足りるのだ。
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