第20章  衛の秘密

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ところが、この日、帰宅してきた彼には少し疲れた様子が浮かんでいる。 別に、連日残業だったような事は聞いてないし、 この日も特に帰りが遅かったわけでもない。 しかし、少しだけ姿が小さく見えるほど元気がない。 「衛、先にお風呂にゆっくり入ってきたら?」 それだけに、私は自然と促していた。 そして彼も、 「うん……」 素直に頷いてくる。 だが、黙って着替えを取りに寝室に向かった彼の背中を見送り、 風呂の準備をしながらふと思った。 考えればこの数週間、私は、きちんと彼の様子を見ていなかった気がする。 もちろん日常の会話の中で、お互いの忙しさはありのままに話題に上った。 しかし私は、特別に多忙ではないという彼の言葉を 単に鵜呑みにしていただけのように思う。
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