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「もうさ、時の経過と共に、彼女のイライラが募るのが分かってね。
でもそれは、俺が何をしても解消できなくて。
だから俺は、香奈とは逆に、離婚できてからはすごく楽になった」
そう話されて、なんとなく彼が私を好きになったのも納得できた。
「じゃあ、私は彼女と真逆だから良かったのかな……?」
すると、スルッと腰に手を回して少しだけ抱き寄せられ、
コツンと額を合わせられる。
「確かに、それが、心地いい空気感を作ってくれてるとは思うよ。
でも、それだけじゃない。
香奈は、今までの俺をそのまま受け入れてくれるだけじゃなくて、
新しい俺まで見出してくれる。俺にとっては、特別な人だからだよ」
相変わらず、こんな素敵な殺し文句をサラリと口にする。
そんな彼が、まさかあんな大きな事を抱え持っていたとは、
この時の私は夢にも思いはしなかった。
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