第7章 海賊で音楽家

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実はあまり、今のメンバーで長い航海はしたくない。 料理人エールがいないからだ。最初は気付かなかったのだが、海の上ではコックというものが重要な役割を占めるようだ。 航海の最中の一番の楽しみは、やはり食事だろう。今はヴェトラの音楽もあるが、音楽は聞かなくても死なない。しかし食事は取らないと死んでしまう。生命の源である。 その楽しい食事が今はあまり美味しく無いのだ。 いや、今が普通なのだろう。たまたまエールの調理の腕が素晴らしかったのだ。 航海中の食事といえば、堅パンと干し肉が多い。それは保存がきくからであるが……しかしエールは、それを極少量のチーズやバターで味付けをしたりしていた。 それに航海のはじめの方では食材も豊富なはず、最初は普通の食事が出てもおかしく無いと思う。 しかし、今のメンバーでは、食事ははじめから堅パンと干し肉のみだ。 エールが居れば最初の数日間は陸の上で、お店が開けるのではないか?と思える程の食事が出たぞ! 今はなぜ、最初から味気ない堅パンと干し肉だけなのだ。 私は新しい航海長のラグナに聞いてみた。 すると、パウルの子分のコックは私たちとの戦闘で死んだと言う。 私は言いたい。70人も生き残ったのだぞ!なぜ、コックが死ぬ!?前に出すぎだ!馬鹿者!!非戦闘員として後ろに隠れていろ!! そういう理由で我が船にコックはいない。そして同じ理由で物資管理係の甲板長もいない。これも私達との戦闘で死んだようだ…… だから、前に出るなと言うのに…… それらの理由により、今回の航海には不安がある。積んでいる食料があてにならないのだ。 恐い……
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