第6章 たかがゲームだ……

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私もこのお嬢さんが、アッパラパーな感じの女の子であれば、こうまで恐縮はしない。 しかし「君はこんな水商売みたいなことをしなくても、他にいくらでも出来ることがあるよ」と言いたくなる様な、理知的な雰囲気の女の子だ。 この子がこんな商売をしている事を、親御さんは知っているのか? いやいや、違う違う。これはゲームだ。この子はゲームのキャラクターなのだ。 あまりにこのゲームがリアル過ぎて、気持ちが入り込んでしまう。 お嬢さんは、私の隣に座っているのだが、私にピッタリと身を寄せて来る。 甘い、いい香りがする。お嬢さんと密着した肌が暖かくて気持ちいい。 湊を抱っこしている時とまた違う感触だ。当たり前だが。 なんで、こんな若い子なんだ?私も社会人だ。会社内で今のような境遇になるまでは、お客の接待などでキャバクラに行った事もある。 その時は、こんなにキャバ嬢とは歳が離れていなかったぞ。 ……だからと言って、私と同年代の四十歳前のおばさんに出てこられても困るが…… しかし、こんな自分の娘ぐらいの子供に来られても…… 私がいろいろと考えていると…… お嬢さんが少し恥ずかしそうにこちらを見る。 顔が真っ赤である。そのクリクリとした大きい目を潤ませて私を見ている。 なんだ? 「あの……」 お嬢さんは恥ずかしそうだ。 「……その」 なんだ?何を恥ずかしがっているのだ?私が、あまりにびっくりしすぎて、この子をジロジロ見過ぎたか? 「……今晩のお相手は決まりましたか?」 なっ、なっ!なっ!! なんだとっっ!! なんだ!その今晩のお相手とはっ!! いやいや、私ももう、いい大人だ!カマトトぶるつもりは無い!! 今晩のお相手とはっ!!もちろん、今晩のお相手だろうっ!? 何を言っとるんだ!私。一度落ち着けっ!!俺!!いやいや、私!! 「もし……その……あれだったら、私と3ピース・オブ・エイトでどうですか?」 何?そんなに安いのか?いや、違う、違う。 私には「お嬢さん、自分をもっと大事にしなければ駄目だよ」との言葉が浮かぶ。
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