第6章 たかがゲームだ……

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しかし、これはゲームだ。このシチュエーションも、ゲーム会社がプレイヤーを囲い込む為に作ったシナリオなのだ。 こんな所で道徳心を出してどうなる? ここでいい人ぶってヤらなくても、ゲームと割り切ってヤっても何も変わらないのでは無いか? そもそも、こんな事を考えること自体がバカバカしい。 ……これはゲームだ。 私はお嬢さんの方を見る。私が見るとお嬢さんは恥ずかしそうにそっと下を向いた。 ゾクゾク…… 背筋がゾクゾクする。理知的なお嬢さんの恥じらいの表情が男心をくすぐる。 「……どうですか?」 もう一度お嬢さんは聞いてくる。声は消え入りそうだ。 私は意を決してお嬢さんに言う。 「……お嬢さん、私は女性を金では買いません。しかし、ケチな男だと思われても男がすたる……」 「……」 「……貴女にここに座って頂いたのも何かの縁だ。3ピース・オブ・エイトは貴女に差し上げます」 良かれと思って言った私だが、お嬢さんの顔がさっと青ざめる。 「お嬢さん、これは恵むのではありません。それに貴女が嫌だからの断り文句でもありません」 少しだけ、お嬢さんの表情が和らいだ。 「貴女に隣に座って頂いた事により私は、お酒を美味しく飲めました。だから3ピース・オブ・エイトを差し上げるのです……」 「……あ、はい」 私はお嬢さんの目を見て、笑いながら言う。 「……私に美味しいお酒を注いでくれてありがとう。可愛いお嬢さん」 たかがゲームだ。私の行為は馬鹿馬鹿しい。何を本気にしているのだ!と自分に言いたい。 しかし、ここで意に反する事は出来ないだろう。 もし、たかがゲームごときに負けて、後ろめたい事をしてしまっては…… ……私はもうまっすぐ湊の眼差しを受け止める事が出来なくなってしまう。 私は会社では窓際以下で、家では妻に馬鹿にされている。しかし、湊だけはいつも私を凄い人間だと見つめてくれる。 私は立派なビジネスマンでも、素晴らしい夫でも無いが……良いお父さんになる。湊が生まれた時にそう決めたのだから……
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