第5章 パフォーマー

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そして、私の怒りの形相に恐れをなしている。「オーバー・ヒート」発動時の私の鬼のような強さが印象に残っているのだ。 次が大事だ!!私には一度やってみたかったことがある。 小説などを読んで少し憧れていたシーンだ。 主人公の一声で人の波が、モーゼの十戒のように割れるシーン。 私はあれをやってみたかったのだ。 現実世界で、そんなシチュエーションに出くわす事はないだろうし、そんなシチュエーションに出くわすような波瀾万丈な人生も嫌だ。 やるなら今しか無い! 私は大きく息を吸い込む!! いくぞ!! 私は周りを囲む敵海賊に怒鳴る!! 「お前らっ!!そこをどけぇ~ぇ~」 しまった!! ……声が裏返った。 「……」 「……」 まずい!!なんだ、この空気は!?皆、どうしていいか分からない表情をしているぞ!! なぜ、こんな大事なシーンで声が裏返る!! 後ろのおっさん連中なんか笑い出してしまいそうだ。 おかしいだろう。 正々堂々と敵と戦った少年が撃たれて殺されたのだぞ。 それを「どけぇ~ぇ~」と声が裏返ったからと言って笑って良いか? このシリアスな場面が台無しだ。 仕方ない。もう一度!! 「少年よ!!お前の無念は私が晴らしてやる……」 私はそう言ってもう一度剣を構える。 「お前らっー!!そこをどけぇっっー!!!!」 私は「オーバー・ヒート」を発動して、目の前の海賊を薙ぎ倒し、パウルに向かう!! 周りを囲んでいた海賊達は、私の怒りの形相に恐れをなして道を開けた!! 素晴らしい!これぞモーゼの十戒だ。 「パウルッ!!お前も男なら!少年と同じように私と一対一で戦えっ!!」 私はパウルの子分達が卑怯な手を使わぬように縛りを入れる。こう言えばそうそう手出しはしてこないだろう。 相手は卑怯な海賊だ。こんな縛りがどれだけの役に立つかは分からないが、言わないよりはマシだろう。 とにかく私の前を塞ごうとする者はいない!! 私は海の悪魔パウルに向かって一直線に走った!! いよいよ、敵の親分パウルと一騎打ちだ!!
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