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「ああ、君に紹介したかな」
「ううん。僕は面識ないけど、柊山先生からそれとなく聞かされてた、君は同級生の妹と恋仲だったって。あいつは要注意だ、過去を引きずる悪い癖があるから、って言ってたな。それに面影があるよ。確かに茉莉花さんの血縁なんだろうなってわかったもん」
ぺらぺらとこの男はよくしゃべる。そして、人の頭に入りやすいように話せる。武は気の置けない愛すべき友人だ。彼へは小細工も回りくどい説明も不要だ。
「もうすぐ四十九日だ」
「うん、そうだね、もうそんなにって気もするけど、まだまだひと月と少ししか経ってなんだね」
「そうだな」
「にわかに信じがたいんだよ、死んじゃったなんてさ。君に茶濁して言葉飾るのは無意味だからそのまま言うけどさ。あの人の人生って何の為に存在したんだろうって近頃思うんだ。人はそこにいるだけで誰かになにがしかの影響を与える。茉莉花さんは、君や子供以外の不特定多数の人々を感化させられるだけの器があったと思うんだ。なのに、表に出ることもなくこの世を去った。もったいないよね。もっと、よりよく生きられた。しかもあの若さだ。残念だとしか言いようがない」
「――私のせいだ」
「そのセリフ、もう聞き飽きた。私に全ての責任がございます、って自己犠牲を表に出したらそれで君の気は済むだろうけど、何の発展もない。そろそろ違うことを言ったらどうなのさ」
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