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時間はあっという間に経ち、時計はもうすぐ12時を告げようとしていた。
私は王子の手を離し、駆け出した。魔法が解ける前に。
忘れずに、靴を片方落としていかなければならない。
そして、私は片足だけ硝子の靴を履いて駆け出した。
さあ、早く、私を探しにいらっしゃい。
あなたのお妃になるのは私よ。
家ではシンデレラが居ないと母親と姉が騒いでいる。
「まったく、あの娘は、どこをほっつき歩いてるんだい!家事をほったらかして!」
怒鳴り散らしても、もうシンデレラが帰ってこないことは、私しか知らないのだ。
翌朝、お城の者が家を訪ねてきた。
この硝子の靴に合う娘を王子が探していると硝子の靴を差し出してきたのだ。
愚かな姉は、私の物ですと足を差し出した。
入るわけないじゃん、あんたみたいなデブが。
私は、当然のごとく、その硝子の靴に足を通した。私にぴったり。
母親は玉の輿と大いに喜んだ。
「この娘に縄を打てぃ!」
唐突にそう言われ、私はパニックになった。
「どうしてです!私は、この硝子の靴をお城に落としてしまったのです!何故、縄をうたれなければならないのです?」
私は叫んだ。母親も娘を連れて行かぬよう懇願した。
「お前はシンデレラの靴とドレスを盗み、シンデレラになりすまして舞踏会へ出た。シンデレラはどこに居る!」
私はわけがわからなかった。どうしてそれがバレたのか。
「舞踏会へ行ったのは、シンデレラではありません。私です。王子と踊ったのは私でございます!」
すると、後ろから王子が現れた。
「王子様!私が硝子の靴の持ち主でございます。あの硝子の靴は私のものでございます!」
すると、王子はぞっとするような冷たい目で私を見た。
「シンデレラをどこへやった。」
「し、知りません。昨日から行方不明でござ・・・」
「嘘をつけ!私はシンデレラにあの硝子の靴を与えたのだ。舞踏会に来る前から、彼女を見初めていた。私はお前達に召使のように扱われているあの娘を不憫に思い、チャンスを与えたのだ。それなのに、来たのはお前だ。何故だ。魔法使いを騙して何故お前が硝子の靴を履いている。」
私は青ざめた。まさか、最初から王子がもうシンデレラをいつの間にか見初めていたなんて。
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