第1章

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突然ですが。 私は他人の心が読めちゃいます。 といっても、あまり自由に使える能力ではなくて。 私が右手で相手に触れると、触れた相手の心の内が流れ込んでくるのです。 十二月。 例年ならとっくに真っ白になっているはずの町なかは、まだまだ秋の風景のままだ。 紅葉を楽しんだ桜などの木の葉はとっくにすべて落ちて、枝だけが寒空に冬支度となっている。 もこもこの手袋、ふわふわのマフラー。 ファーつきのコート、ヒートテックのスカート。 二枚履きのタイツ、裏起毛のブーツ。 こちらも準備万端、冬仕様。 「でも、ひとりきりのクリスマス……しかも雪も降らない」 淋しく呟いたと同時に、私の右手が誰かの腕に当たった。 流れ込んでくる、見知らぬ人の心のなか……。 "早くトナカイを迎えに行かなきゃ! それに赤い服と、帽子! 白い袋はどこで受け取るんだ?" 振り返ると、同じ年くらいの若い男が、メモを片手にキョロキョロしている。私とぶつかった事になんて気付いてもいないようだ。 「わぁー、この人サンタクロースだ」 呟きが聞こえてしまったようだ。 「なんでわかったっ!?」
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