第1章

3/3
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
男は驚きのあまりか、持っていたメモをひらりと落とした。それを拾って読み上げる。 「えーと、トナカイは隣町の牧場からレンタル。赤い服一式をクリーニングから受け取り。白い袋はいつもの店で。ソリは……」 「読むなっ!」 パシッとまた、私の右手が彼に触れた。 "早く行かなきゃなんないのに、こんなガキの相手してる暇はねぇよ!" 「ガキじゃないわよ!」 聞こえてきたとたんに、言い返す。と、男は「なんも言ってないのにぃ!?」と白い歯を見せた。 「ねぇ、手伝ってあげるわ。あなたこの町の人じゃないでしょ?」 余計なお世話だとわめく男の腕を掴んで、引っ張り歩き出した私。 もちろん右手で。 "な、なんだよ、ちょっと可愛いからってっ! 確かにこんな子とクリスマスの町をデートできたらいいなとか思ったりしたけど……。クリスマスは仕事だからなぁ" 「べつに、26日でもいいよ」 「……えっ?」 今年、サンタクロースの彼氏が出来そうです。 *end*
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!