第1章

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──何故だろう。お金なら、どれだけかかってもいいから、彼の心が知りたいという自分が強い。 それが、この店の力……無意識じゃないとこれない店。彼の心を知りたい、と願ったから辿り着いた。 ──心、読みます。覚 あの看板に、私は導かれた。拒否する考えなど、最初からなかった。 「依頼、します!」 「了解しました。立ち話もなんですから、あちらに座りましょう」 対面する形で、私と覚野さんはソファに腰を下ろす。 「さて、必要事項を一つ。先程から僕は心が読める、と言っていますが、あなたはそれを百パーセント信じてますか?」 「えっと……」 実を言うと、半信半疑だ。胡散臭さを覚えたのは確か──だけど、覚野さんの雰囲気が、嘘ではないことを語ってる、ような気がする。 彼の心が知りたい、と願ってこの店に辿り着いたけど、本当に覚野さんが心を読めるかどうかは、定かじゃない。 濁した返事で、百パーセントではないと確信したのか、覚野さんは苦笑にも微笑にも取れる笑みを浮かべた。 「少しでも疑ってる気持ちがあるなら、どうでしょう。僕が、あなたの心を読むというのは」 「私の心?」 そうか、私の心を読めれば、覚野さんが心を読めるという確証になる。 「はい。依頼内容を心を読んで知ります。依頼人の方には、そうして信じてもらうようにしてるんです。──でも、嫌でしたら、無理にとは言いませんが……」 「いえ、嫌じゃないです。えっと、どうすれば?」 「右手を、出してくれるだけで構いません」 言われた通り、右手を出す。 「では、いきます」 覚野さんの指先が、私の指先に触れる。今、心を読まれてる。 そう思うと何だかソワソワして、落ち着かない。けど、実感はない。 五秒程度で、覚野さんの指は離れた。覚野さんの口が動く。発せられた言葉は、実感が湧かなかっただけに、大きな衝撃となった。
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