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「なるほど、彼氏が他の女性と腕を組んでいる所を目撃してしまった、というわけですね、内田さん」
「……」
「つまり依頼は、浮気調査。対象者は彼氏さん」
二の句も告げなかった。当たってる。心を読んでほしい人も、内容も、私の名前も。
──覚野さんは本当に人の心が読める。
「内田さん、浮気調査なら、一万円になります」
「一万円?」
「──ていっ!」
変な言葉とともに、身を乗り出して私の肩に触れた。
「あっ……」
心を読まれた。料金に対する思いを。
「あれ?安いって思ったんですか?」
「はい。一万円で彼の心が知れるなら安いものです。というか、急に読むのはやめて下さい。心の準備が出来ないじゃないですか」
「あぁ、ごめんなさいごめんなさい。もうしません、許して下さい」
「いや……そこまでは怒ってないですから」
及び腰だったり、生き生きとしたり。かと思えばまた及び腰。コロコロと変わる彼が、ちょっと可愛くて、可笑しかった。
「は、話を戻しましょう。内田さん、浮気調査で間違いないですね?」
「はい。あっ、料金は先払い?」
「半分を前金として頂いて、残りは依頼後というシステムでやらせて頂いてます。全額先に受け取って、その後の依頼は適当にでっち上げることが出来たりしますからね、僕の場合」
「……ん?先でも後でも、でっち上げること出来ますよね?」
「……そう言われてみると、そうですね。やはり僕には、商才と呼べる物はないようです」
「私の前でそれ言います?ふふっ」
本当に面白い人。それに私には、覚野さんが適当にでっち上げるという器用な真似が出来る人とは、到底思えなかった。
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