the present 1

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 恵桐学園の生徒会は中高とも、二年生の九月時点で成績上位の生徒から自動的に生徒会長、副会長、会計、書記の席が埋められ、他の執行部員が立候補者の中から役員によって選別される。そしてもう一人、一年生の成績上位一名が、会長補佐として籍を置く。つまり、一年の時点で次の会長が決定してしまうのだ。学業をしっかりとこなせていない者に、生徒会の仕事をする余裕などない。というのが学校側の理由らしい。なのでもちろん、成績を落とした場合、そのポジションは他の生徒に譲ることになるのだが、プライドにかけて、そんなことはできない。  中学の時、響は一年間方総の補佐として生徒会に在籍し、翌年の一年間は生徒会長を務めていた。そして今は、高校で生徒会長の藤堂隆行の補佐に就き、おそらく来年は自分が再び会長となる。  二人は並んで人気のない廊下を歩き、方総の知らない響の友人、川本慶一郎(かわもとけいいちろう)が続く。 「卒業してから初めてじゃないですか? ここに来るの」 「うん」  三階にある生徒会室へ向かうため階段を上っていると、たまにすれ違う生徒のすべてが、方総を見て目を見開き、中には、「あ!」と声を上げる生徒もいる。 「不必要なまでに目立ってますね」  わかりきっていることだから、言わずにおこうと思っていた響だったが、とうとう我慢できず、苦笑とともにもらした。 「仕方ないだろ。中学の制服着るわけにもいかないし」 「そんなことしたら、余計に悪目立ちですよ」 「わかってるよ」  そんなことをされたら、どうかしてしまったのかと心配してしまう。言外に「だからやってないんだろ」と言っている方総の言葉に、しないでいてくれてよかったと、響は苦笑を浮かべ続けた。 「で? 今まで一度も帰ってきたことのない人が、わざわざ金曜日に来るなんて、そんなに急ぎの用事なんですか?」  中学の時に仲の良かった二人が、高校が離れて疎遠になったとも思えない。一日待てば明日は土曜日で、いくらでもゆっくりと会えるのに、わざわざ足の遠のいていた母校に電車を使ってまでやって来たのだ、どんな緊急事態だというのだろう。そう思って、少し自分より身長の高い方総に目線を上げる響きに、 「急ぎっていうわけじゃないけど、ココじゃなきゃ、意味がないから」  方総は、前を見たまま淡々と答える。
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