the present 1

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「そんな話は聞いたことないよ。それとも、菅原っていう苗字に聞き覚えでもあるの? 母子家庭で、二年の終わりごろにお母さんがアメリカに転勤になって、ついていくか寮に入るかで寮を選んだはずだから、どこかの企業主の息子とか、政治家の息子とかっていうのではないよ」 「ああ、で、寮の部屋が仁志と同室になったとか? それで仲良くなった?」 「同室だったのは事実だね」 「ふうーん。じゃあ、まあこれで、仁志の機嫌も直って、妙に緊張感のある学園生活にも終止符が打たれるわけだ」 「――そうだね」 「それにしても、改めて考えると、中学から寮があるってすごいよな」 「もともと中高一貫の全寮制男子校として開校したんだから、あっても不思議じゃないだろ」 「え? そうなの?」 「うん」  今まで黙って先輩たちの話を聞いていた慶一郎の呟きに響が説明するのを右から左へと聞き流しながら悠貴は、 (機嫌が悪いだけですんでるんなら、わざわざ方総呼び出したりしないだろうけどね)  と、胸の中で呟いたが、色々と説明するのが面倒で、それを口にはしなかった。
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