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俺はあまりの悪臭に顔を歪めた
目の前にいるのは異形の存在「妖」
体中に九十九の口があり、歯や舌が蠢いている
滴る唾液は木々を腐らせ水を毒へと変えた
これが原因により、近隣の村は作物が枯れ水も使えなくなってしまっていた
「人神」になる為に修行の一つとして妖退治をしている
俺は刀を構えると心臓に向けて突き刺した
甲高い金属のぶつかる音がすると、ニヤリと妖の体中の口が笑った
刀は妖の口によって噛み止められてしまった
俺は驚きの声を上げると思わず距離を取った
それを見ていた八雲がやれやれと刀を抜く
「飛鳥 よく敵を見て隙を付け!」
放たれた斬撃は全て妖を切りつけ、確実に死へと追いやっていく
八雲は一声かけると俺に目掛けて妖を蹴り飛ばした
「ちょっ待て!馬鹿!」
俺は経を唱えながら刀を構えると、刀は白く発光しながら正確に妖の心臓を貫いた
「私は...ただ幸せに...」
その言葉に俺は黙祷を捧げ、静かに答えた
「来世ではきっと」
全ての妖は人から生まれる
怒りや悲しみ そして、人の罪から
神は人を裏切り、全ての人を妖を使って殺そうとしている
今回のことも神の仕業なら必ず神を殺す
俺は必ず「人神」になる
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