第1章・一年後

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寝そべった体勢のまま腕だけ伸ばして冷房のスイッチを入れる。 隣の樹は寝息を立てていた。 疲れて熟睡しているのだろう、起きる気配は全然ない。 見ると、首筋や乱れた前髪の隙間に汗が光っていた。 そんな寝顔さえ愛しくてたまらない。 私は樹を起こさないように気遣いながら、そっと静かに汗をタオルで拭った。 樹はかすかに動くものの、目は瞑ったままだ。 樹の汗にタオルを当てながら、欲情が身体の奥から沸き上がる。
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