覗く子

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「あの…あそこでこっちを見てるの、お子さんですか?」  多分そうだと言われる質問。これで何が判る訳でもないけれど、何となく確かめたくて口にすると、意表を突く答えが返ってきた。 「子供? ウチの子なら、今、学校に行ってますけど」 「え? でも、あそこにいる三歳くらいの…」 「? ウチの子は二人共小学生ですよ」  対応している奥さんがおっとりと答える。その相手に、見間違いだったと対応し、俺はそこのお宅を離れた。  …この件以来、どこの家に宅配に行っても、その家のどこかに無表情な用事を見かけるようになった。  何も言わず、ただじっと、俺の姿を覗き見ている子供。  君は悪いが目立った害はないし、そもそも、対応する手段がない。だから不気味でも放置している。  ああ、今日の家でもこっちを見ている。この家の子らしい、表情豊かな幼子の隣で、とことん無表情に俺を見ている。  その顔を見続け過ぎたせいかな。俺は、にこやかな顔の子供を見てももう笑いかけられなくなった。  そのせいで、前はにこにこした宅配のお兄さんとして接してもらっていた俺は、このエリアじゃ、不愛想すぎる宅配のオジサンと呼ばれている。…害といったら、多分これが一番の被害だろう。 覗く子…完
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