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ボクの名はトードリリー。
それを敢えてここに記すのは、この名がボクにとって大切な人に付けられたものだからだ。
この日記はボクが生きた証かもしれないし、或いは死んだ証かもしれない。
少なくとも今この一文を、ボク以外の誰かが読んでいるのなら、それはきっと後者なのだろう。
もしそうだとすれば、どうかその人にはお願いしたい。
叶うのであれば彼に、ボクにとって大切だった彼に、この日記を届けて欲しい。
彼の名はルフ。
いやそれはボクが彼に付けた名か。
本名は確かーー、フレデリック。
ーーフレデリック・ロックフェザー。
彼は自身の名の意味を、束縛せず、そしてまた愛すことと言った。事実そういうひとだった。
貴方がボクの同志なら、きっとこの情に怒るだろう。でもボクは務めを果たす。果たしたのだから聞くべきだ。もう天国へ昇った人間の、ささやかな遺志ぐらいは。
或いは彼の国の人ならば。頭を下げてでもお願いしたい。いいやーー、お願いします。酷い迷惑をかけた事実は、あなた方が私の家族を奪った過去で埋め合わせて、帳消しにして下さい。
彼に、ただのテロリストだと思われたまま死ぬのは辛い。それだけは絶対に嫌だ。想っていた事を、心から愛していた事を伝えて欲しい。鳴けないボクの、この喉の代わりに。
どうかお願いします。
それだけがボクの、この地上に残す最後の願いです。
どうか。
それだけを、せめて。
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