陰と陽

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ある町のある通学路の夏の話 ランドセルをしょった小学生達が今日も1日学校へ通う 商店街を抜けて踏切を渡り学校のすぐ手前にある小さく細長い畑がある そこの畑には向日葵(ひまわり)がたくさん植えられていて夏になると子供たちはうれしそうにその通りを眺める ここの向日葵は子供たちの大の人気者だったのだ ちょうどその通りの向かいの建物の日陰に一輪の蒲公英(たんぽぽ)が咲いていた その建物は学校のすぐ近くにあるにもかかわらず見栄えの悪いどこか薄暗い建物だった。 五階建てで色はどこか薄汚い赤茶色で所々塗料がはげていて周りには雑草ばかりの手入れもされていない廃墟ビルだった そんな学校の近くにあるから子供たちの悪い噂の的となった。ビルにはおばけがでるとかビルの前を横切ると呪われるジンクスがあるとかだ だからそんなとこに咲いている蒲公英なんて誰も目に止めないだろう 春先を過ぎて夏が迫ってきたとき向日葵が咲き乱れて子供たちは大いに喜んだ その蒲公英ももう咲き終わり種を着けて風にのって子供の種たちを送り出した しかし一つだけどうしても母親のもとを離れない種がいた その種は兄弟の中でも頭がよく色々な質問をするので家族を困らせていた。 そんな種が最後に旅経つ日に母親に尋ねた 『ねぇお母さん、お母さんはこんなところで一人ぼっちで咲いていて寂しくないの?』 母親は応えた『寂しくなんかないよ。おまえたちがいるからね』 『でも僕、いつも思うんだ。向かいの向日葵さんたちはうらやましいなって』 『どうして?』 『だってあんなにお日様の光を浴びてあんなにたかく咲いていてあんなに子供たちに人気なんだよ?それに比べてお母さんはこのビルの日陰になんか咲いているから誰もこのとおりを通らないし誰にも気付いてもらえないでしょ?やっぱり日陰に咲いたからだよ。同じ黄色い花なのにどうして蒲公英は向日葵とこんなにも違うの?』
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