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○東郷スタジアム グラウンド
パカーン、パカーンとつるべ打ちに遭う大森を、記者席から見つめている野々村結子(29)と松本(24)。
大森の顔は蒼白で、ランナーを出すたびにベンチの風間貢一(55)を不安そうに見る。
風間の顔は怒りで湯気が出そうになっている。
余計に縮こまり、面白いように打たれる大森。
塁は埋まりっぱなし、その上フォアボールを出して、電光掲示板の得点が増え続ける。
松本「うわあ……これは大森、また二軍落ちッスね。今季これで四度目でしたっけ?」
結子「フン……」
○同 ベンチ裏
そそくさと帰り支度して出て行こうとする大森に、寄ってくるマネージャー。
大森、ギクリとして見えぬふりをし、早足になる。
マネージャー「大森……残念だけど、明日から――」
大森「――わかってます。また二軍でしょ」
大森、マネージャーを振り返ることもなく歩き出す。
そこに現れる結子と松本。
他の選手達は、結子の姿に気付くや否や、潮が引くように逃げていく。
選手1「東都スポーツの『激辛キッコ』だ」
選手2「食いつかれるとボロクソ書かれるぞ」
結子は気にせず、大森の行く手を塞ぐ。
結子「えらいピッチングでしたね、大森さん」
大森、顔を歪め、結子を押しのけて歩いていく。
その背中に結子は言う。
結子「マウンドでおろおろして監督を見る顔――ママを探す赤ん坊みたいでしたよ」
大森の背中がカッと怒りに燃える。が、振り返らず、足を速めて去る。
松本「キ、キッコさぁん、言い過ぎじゃ……」
オタオタする松本と、気まずい他の記者達に、結子だけが平然。
そこへ不機嫌な風間が現れて、記者達がどっと流れ、取り囲む。
記者1「監督、今日はピッチャーが先発も中継ぎももう一つでしたね」
記者2「打つ方も惜しかったですけど」
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