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空が青い光を無くしてから、大粒の雨が降り始めるまでに、そう時間はかからなかった。
琢磨は全速力で自転車のペダルを踏み込んだ。
遅刻を危惧しているわけではない。
ただ、雨に濡れるのが嫌なだけだった。
雨宿りする場所もない田んぼ脇の細道は水に弱く、不規則に現れる泥濘にリズムを狂わされた。
それでも体勢とペースを保ちつつ、ひたすら前進する。
──1秒でも早く学校へ...
琢磨は学校が大嫌いだったが、保健室にはタオルもドライヤーもある。
細道を抜けたところにあるコンビニで雨露をしのぐ事も出来たが、自分の身体より遥かに大きな窓からは、その暗い景色が嫌でも視界に入る。
琢磨はそれほどまでに雨が嫌いだった。
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