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ええい、もう言ってしまえ。
「長谷部さん! あの、もしよかったら今夜の花火大会、僕と一緒に行ってくれませんか!」
勢いに任せて昨日から考えていた台詞をなぞる。恥ずかしさに顔を上げられないまま、僕はとうとう言ってしまったと心の中に思っていた。これで終わりだ。多分僕はこの第一関門も通過できずにあっけなく振られてしまう。
けれどしばらく経っても彼女は何も言わない。おそるおそる顔を上げてみると、彼女は悲しげに眉を下げ、今にも泣きだしそうな顔でこちらを見つめていた。見開いた目は動揺に揺れている。その予想していたのと全く違う表情に僕がどうしていいのか分からないでいると、彼女は一つ息をついて宮田君、と呼びかけた。
「は、はい」
「行こう。花火大会、一緒に行こう」
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