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あの出来事から半年弱。
結局松井さんとはそれっきりだったので、あれは私の自意識過剰が見せた夢だったのでは?と最近ではそれすらも疑っていた。
だって、あんなに真剣な目で好きだなんて言っておいて。
そのまま何か月も放置できるなんて、やっぱりただの冗談にしか思えない。
酔っ払った弾みで理絵にはグチグチとそうこぼしたクセに。
いざ本人を目の前にしてしまうと、私の胸は針で刺されたようにチクリと痛んだ。
「ねえ。もしかして、あの人が”マツイさん”?」
「……うん」
「確かにあれは存在感半端ないわ」
「だね…」
この痛みは罪悪感。
そう名前を付けてしまわなければ、取り返しのつかないことになりそうな気がした。
断ろうとしたあの告白をいつまでも根に持つほど自惚れてなんかない。
けれど、ぶつかった強い視線はあの夜と同じ。
今にも泣いてしまいそうな目で、私のことを見つめていた。
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