DD!1.5

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 ただし、それを警察官が認めることは、普通はしない。普通は――。  大輔は、ふてぶてしい態度の普通ではない先輩に、大きなため息を吐いた。晃司に普通は期待できないと承知しているので、大輔が困った店長に対応することにした。 「店長さん、無料案内所に防犯カメラは設置してないんですか?」 「してないんですよ、お客さんのプライバシーを考えて。刑事さんだってイヤでしょ? 鼻の下伸ばして、風俗の案内看板見てるの、カメラで見られてたら」 「そりゃあ、まぁ……」 「北荒間自体、防犯カメラが少ないんです。防犯カメラがなくても、治安がいいってのを目指してるんですよ。お客さんにとって最高でしょ? 安心と、プライバシー保護が両立するんだから」  店長は真面目だったが、大輔は北荒間にやって来るあらゆるスケベのことを思い出し、正直どっちでもいい、と考えていた。  お金を払ってまで性的なサービスを受けたい、という気持ちが大輔にはいまだに理解できない。大輔は二十五にもなって、性欲や恋愛を上手く消化できないのだ。 「……とりあえず、うちで預かります。上と相談して、多分……パトロールを増やすぐらいしかできないと思いますけど。もちろん、制服じゃなくて私服の、うちか防犯係の警官が」  歓楽街に制服警官が巡回したら、売り上げが落ちるのは半分ではすまないだろう。店長は大輔の言葉に安心したようだった。 「ありがとうございます! 生安課が見回ってるって噂が回るだけで、パトロール効果がありますから」 「あ~あ! まぁた仕事増やされちまった!」  まだふてくされている晃司が、またもやあるまじき発言をする。大輔がもう一度怒鳴ろうとしたが、その前に店長がズイッと身を乗り出した。 「そう怒らないでくださいよ、小野寺さん。次に店に来た時、三十分延長、サービスしますから!」 「な、なに言って……!」  長机に乗せた晃司の足が、ガタッと落ちる。晃司が店長を止めようとしたが、店長はニヤニヤして続けた。 「小野寺さん、ほんとお強いですよね~! 先週でしたっけ? 三十分も延長してくれちゃって! あれなら最初からケチらないで、百二十分コースにした方がお得ですよ! だから次は、うちから三十分サービスしますんで! あ、新人の刑事さんもどうぞ。うちは本当にサービスがいい、可愛い子ばかりで……」 「店長! そろそろ店が忙しくなる時間だろ!」
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