DD!1.5

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「なぁ大輔、お前……なんで怒ってるんだ?」  訊かれたくなかった。大輔は俯いた。 「言い訳になんねぇけど……お前につれなくされて、寂しかったんだよ。それでつい馴染みの嬢に誘われてフラッと……。大輔、お前がイヤだっていうなら、もうどこの店にも行かない。でもお前は……なんで俺に触らせてくれないんだ?」  晃司の手が、大輔の右腕に触れた。それはいつもの遠慮のないセクハラと比べたら、ずっと優しかった。  そっと晃司を見上げる。 (こんな風に触るぐらいなら……)  セクハラで尻を揉まれる方がいい。そうしたら、思い切り怒ってぶん殴ってやればいいからだ。  あれから何度も、晃司に誘われている。二人が初めて結ばれた、生安課御用達のラブホテルMに呼び出されたこともある。  けれど大輔は、応えられなかった。晃司に惹かれているのは間違いないのだが――。  大輔は過去のトラウマから、二十五歳になるまで己の欲望に向き合ってこなかった。そして欲望と表裏一体である恋愛からも逃げてきたから、自身でこの現状を把握できないのだ。  晃司に惹かれるのが欲望からなのか、そうじゃないのか、大輔にはわからない。  だからまだ、もう一度、晃司に身を委ねることは抵抗があった。 (だって晃司さん……やっぱり俺じゃなくてもよかったんだ)  大輔で欲望を果たせなければ、風俗嬢に満たしてもらう。それができるならば、晃司こそなぜ自分に執着するのか。  わかりそうで、大輔にはわからなかった。  大輔に恋愛は、あと二年ほど早いのかもしれない――。 「……くそっ、そんな目で見んなよ」  焦れたように晃司が言い、いきなり抱きしめられた。 「こ、晃司さん?!」  そのままドアに押しつけられ、顔が近づけられる。 「本気でイヤなら……殴って逃げろ」  強引にキスされた。イヤなら殴れと言われたが、両手は晃司に掴まれドアに押しつけられてしまって、できっこなかった。  そもそも大輔の手に、力が入らない。 「んっ、い、や……っむ」  キスから逃れようと、わずかばかりの抵抗をする。しかし、それは形だけだった。  晃司のキスは――熱い。  力強くて荒っぽくて怖いほどなのに――逃げられない。  勤務中で署内にいることも忘れ、大輔は久しぶりの晃司のキスに溺れた。頭が蕩け、バカになる――。  そして、我に返る。 (こ、これがダメなんだ……!)
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