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「駅弁大学、かあ…僕も今日からここで、大学生なんだなあ!」
ここは、田舎県駅弁市にある中堅国立大、駅弁大学のキャンパス。この大学の理学部生物科に入学してきた新入生、目有めありアキラ(20)は、一浪の末たどり着いたこの大学に、夢のキャンパスライフを、薔薇色の青春を期待し、胸を膨らませていた。
「趣味に学問に友人関係に、そして今まで縁のなかった、れ、恋愛に…うおおお!楽しみすぎる!楽しみすぎるゾーッ!」
キャンパスは新入生歓迎の毛色で満たされ、サークルの勧誘の立て看板や、ビラを配る上級生、楽器を演奏する音楽サークルなどで賑わっていた。
「サークルかあ…どれも楽しそうだなあ!いくつも入って、ステキなサークルライフにしよう!さて、どれに入ろうかな…」
「そこの君!そこの、メガネで小太りの君!!」
目有は後ろからの突然の失礼な呼びかけに立ち止まった。
「え…俺ですか。なんか用ですか」
「そうだ!君だ!まさしく君だ!君のような男にこそ、用があるのだ!」
なんだか冴えない見た目の、少し暗そうな男がそこには立っていた。服装も、理系や工学系に多そうなダサい赤チェックのヨレヨレシャツに、いかにも安物の色落ちしたジーパン、極めつけは薄汚れて所々破けたデロデロのリュックサック。いかにもイケてない男だ。
「君、新入生だろう?名前は?」
「えっ…め、メアリです。目有アキラ。」
「そうか、メアリくん。では率直かつ単刀直入に聞くが、君は童貞か?」
「えっ…は?あの…は?」
メアリは耳を疑った。初対面でかつ新入生である自分に、上級生が急に「童貞か?」などという質問をしてくるとは、予想外も予想外。
「ああ、答えたくないなら答えなくても良い。君の目を見れば、返事を聞かなくても分かる。」
「は、はあ…」
「案ずるな。かくいう私も童貞でね」
何なんだ、この男は。
メアリの嗅覚が、全力でこの男に関わってはいけないと告げていた。
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