第1章

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さっきから、いったい何分走り続けただろう。 息はあがってるし、足も重い。もつれて転ばないのが不思議なくらいだ。 「……待てっ!」 声も掠れてしまった。しかし、目標の人物の背中を見失わないように、追いかけ続けなければ。 額から首筋に流れる汗を、走りながら拭った時。奴がタクシーを捕まえた。 「くそっ!」 ここは駅だ。車なんか数えきれないほどある。いつの間にこんなところまで……っ。 俺も奴にならい、空車のタクシーに飛び乗った。 「前の車を追ってくれ!」 一度やってみたかったんだ。……内緒だけど。 運転手は「どの車だぃ?」と車のドアを閉めるのも忘れてキョロキョロ。 俺は仕方なく最終手段を取った。 「"あのタクシーを追うんだ"」 俺の声が耳に入ったとたん、運転手は「まかせろぃ」とアクセルを踏んだ。 「どどど、ドアを閉めてからにしろっ!」 目をギラギラさせた運転手は間違いなく奴が乗ったタクシーを追った。 一息つきながらも、俺は奴から目を離さない。 前のタクシーが信号で止まった。チャンスだ。ここで降りて前のタクシーに回り込み、掴まえよう。
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