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さっきから、いったい何分走り続けただろう。
息はあがってるし、足も重い。もつれて転ばないのが不思議なくらいだ。
「……待てっ!」
声も掠れてしまった。しかし、目標の人物の背中を見失わないように、追いかけ続けなければ。
額から首筋に流れる汗を、走りながら拭った時。奴がタクシーを捕まえた。
「くそっ!」
ここは駅だ。車なんか数えきれないほどある。いつの間にこんなところまで……っ。
俺も奴にならい、空車のタクシーに飛び乗った。
「前の車を追ってくれ!」
一度やってみたかったんだ。……内緒だけど。
運転手は「どの車だぃ?」と車のドアを閉めるのも忘れてキョロキョロ。
俺は仕方なく最終手段を取った。
「"あのタクシーを追うんだ"」
俺の声が耳に入ったとたん、運転手は「まかせろぃ」とアクセルを踏んだ。
「どどど、ドアを閉めてからにしろっ!」
目をギラギラさせた運転手は間違いなく奴が乗ったタクシーを追った。
一息つきながらも、俺は奴から目を離さない。
前のタクシーが信号で止まった。チャンスだ。ここで降りて前のタクシーに回り込み、掴まえよう。
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