第1章

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見事に奴はパトカーに囲まれ観念した。 捕まった奴のそばまで行き、耳に当てていたヘッドホンを引き抜く。 「"反省するんだな"」 奴は肩を落とし、タクシーではなくパトカーに乗り込んだ。 奴を乗せたタクシーを見送ると、妻から電話がかかってきた。 『奴は捕まったの?』 「あぁ、なんとかな」 『あんた無作為に力を使ったでしょう?』 「なんでだよ」 『町ではタクシーが追いかけっこしてるし、大男が誰かを探して迷子になってる。ニューハーフの大女ふたりが誰彼構わず誘ってるのよ……温泉に』 「何故、温泉……」 ちょうどそんな話をしていたのだろうか、声をかけた時。 『だいたい、自分の息子ひとり捕まえるのにパトカー使わせるんじゃないわよ!』 「いや、立派に犯罪をだな……」 『じゃああなたは自分の尻拭いをしてから帰宅してね。私は奴を迎えに行くから!』 「尻拭いってなんだよ」 『追いかけっこしてるタクシー捕まえて、大男探して、ニューハーフと温泉に行けば!?』 ……俺は他人を操れる力がある。 しかし、世の中はうまくいかないものだ。 「"夕飯はステーキで"」 『お茶漬け』
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