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見事に奴はパトカーに囲まれ観念した。
捕まった奴のそばまで行き、耳に当てていたヘッドホンを引き抜く。
「"反省するんだな"」
奴は肩を落とし、タクシーではなくパトカーに乗り込んだ。
奴を乗せたタクシーを見送ると、妻から電話がかかってきた。
『奴は捕まったの?』
「あぁ、なんとかな」
『あんた無作為に力を使ったでしょう?』
「なんでだよ」
『町ではタクシーが追いかけっこしてるし、大男が誰かを探して迷子になってる。ニューハーフの大女ふたりが誰彼構わず誘ってるのよ……温泉に』
「何故、温泉……」
ちょうどそんな話をしていたのだろうか、声をかけた時。
『だいたい、自分の息子ひとり捕まえるのにパトカー使わせるんじゃないわよ!』
「いや、立派に犯罪をだな……」
『じゃああなたは自分の尻拭いをしてから帰宅してね。私は奴を迎えに行くから!』
「尻拭いってなんだよ」
『追いかけっこしてるタクシー捕まえて、大男探して、ニューハーフと温泉に行けば!?』
……俺は他人を操れる力がある。
しかし、世の中はうまくいかないものだ。
「"夕飯はステーキで"」
『お茶漬け』
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