ミントゼリー

2/8
前へ
/30ページ
次へ
言葉というものほど、厄介なものはない。 だから思う。 約束なんて、保証のない儚いもので。 軽い気持ちで紡いだ言葉は、99%の確率で見事に裏切られる。 だから私は絶対に信じない。 幼い頃からよく見てきた光景。 パパの黒いふかふかのイスに腰掛ければ、良く見える。 誰かがこのイスに座る人に頭を下げる光景。 泣いて許しを請う人。 土下座をしておでこをマットレスに叩きつける人。 悔しがって去っていく人。 いろんな表情があるけど、みんな絶望を貰ってここから消える。 パパは有名なIT企業の社長で、そして私はそんなパパの唯一の娘。 2つ下に弟がいるけど、やっぱり女の子だからかなあ。パパは私に甘いと自分でも思う。 そんなパパが大好きで、幼い頃はパパが会社に行くのすらも寂しくて泣きくじゃっていた。 だけどある日気づいた。 パパの会社に黙って行ったら、そんな光景を見た。 その黒いイスに座る人をパパだと思いたくなかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加