7《君がすき》約束編

ミントゼリー

その約束を、パパが守ったことはあった？

いい子ってなんだろう。
そう思ってママの家事も手伝ったし。
その日の勉強だって全部やった。
上手に絵も書いたし、部屋の掃除だってした。

だけどパパが早く帰ってくることはなかったなあ。
そうだよね。
だってパパは約束をするとき、決まって笑っていたから。
自然な笑顔じゃないの。
なんていうんだろう。胡散臭い笑顔っていうのかな。
人工的に笑顔を作るからだろうね。私はそれ以来、パパの笑顔が怖くなった。

それから、約束というものも。

別にパパと仲が悪くなったとかじゃなくて、今だって普通に喋るし、一緒におでかけたりしたりもする。
パパの帰りが遅いのも、仕事が忙しいからだって分かってるし。
ただ私が、約束という言葉を使わなくなっただけ。
だからどうしたってわけじゃないんだけど。

それから私は素直になれないんだ。
友達でも、家族でも、いつでも気を張っていなくちゃいけなくなった。
本当の自分がどんな自分だったのかも。
もう今の私が定着しすぎて、どんな私でも私なんだろうけど。
本当の自分が、いつの間にか。
私には分からない。