異世界に行ってきます。逝ってらっしゃい

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■ 「え!? もう決まったの?!」  そう驚いて目を見開く友人は……誰だっけ? 名前が思い出せない。 「早くない?! しかも大企業じゃん! 流石だわ~」  友人は羨望と呆れが混じった目で私を見てくる。  そうだろう、そうだろう…―ってなんの話だっけ…………あ、就職活動か。そうそう教授の推薦もあって、あっという間に決まったんだっけ。 「へぇ、上京するんだ。私たち離ればなれになっちゃうね。忘れないでよ?」  忘れないよ……いやごめん、忘れた。誰だか思い出せない。記憶の中で、すっぽりそこだけ抜け落ちている。四年間ずっと一緒にいた大学の友人……だよね? なんで忘れたんだろう忘れるはずないのに。で、誰だったっけ? 何の話をしてたんだっけ…―  だ―― ■ 「あー疲れたーーーー!」  突如明るい声が耳に入り、私の心臓の脈が一瞬跳ね上がって飛び起きた。  目の前にはチロチロと申し訳程度に燃える暖炉。私は籠の中で触り心地良い毛布に包まれていた。暖炉の周りはワインレッドの壁に、毛長の緑のカーペットが敷き詰められていて、そこら辺には華やかなクッションが散らばっていた。  どこの部屋の中だかわからないけど、とても温もりがある。  先ほどの声は後ろの方から聞こえてきた。それに続き、ぎゃあぎゃあと人の声が増えて賑わい始めた。 「静かにしなさい。雛鳥が起きちゃうでしょ!」 「もう遅いと思う」  フッと視界暗くなり、不思議に思って見上げたら、緑色の目と合った。
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