異世界に行ってきます。逝ってらっしゃい

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 女神……様? 「良かったぁ! 回復してくれた!」  優しく話しかけ、ふにゃりと嬉しそうに笑いかけるその女神様。キーが若干高いが確実に男の子の声だ。  なら女神様じゃなくて女神君と名付けよう。  女神君は紺色の柔らかそうな長い髪を緩く横に結び、ピンク色のパッチリとした瞳を穏やかな眼差しで私を見ている。月の女神様がいるのなら、その名はこの子に相応しいかもしれない。中性的な顔立ちの女神君は、美形君と同じくらいの歳であろう。  右には美形君、左には女神君。どちらを見てもイケメンがいる。心臓に悪い。  ……子供だけど。 「どうせ直ぐ鶏肉になる。見ろ、まだモロだ。俺たちが匿った所で、モロから大人になるまで生きられないだろう。それほど鳥のモロは弱い」  言葉も通じなかったら、本当に人生詰んでいたかもしれない。言葉が理解できるのはありがたい。けれど、美形君の『モロ』という言葉は聞き取れず、どういう意味なのかわからなかった。何故そこだけ通じないのか謎である。 「鶏肉って言うの禁止! ちゃんと面倒見れば元気になってくれるって、僕は信じてるんだから!」 「はいはい。お前が勝手に昨日の夜にこのモロを拾って来たんだからな、お前が面倒見ろよ」  そうなのか! 私を助けてくれたのはこの女神君だったのか!  益々この子は女神君だと思う。隣の獣耳を生やした誰かさんとは全く違う。
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