異世界に行ってきます。逝ってらっしゃい

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■  疲れた。子供って恐ろしい。  あの後、私に虫を押しつける女神君 VS 絶対に食べないで騒ぐ私、との長きに渡る攻防を繰り返していた。  部屋の中にいた他の人達は、その騒ぎに何が起こってるのか気になって集まり始め、そのまま私達のやり取りを見ていた。ざっと数えて十五人位はいたかもしれない。  見ているだけなら未だしも、誰かが「虫が大きすぎて食べられないんじゃないか」と余計なことを言い出した。その言葉を聞いた女神君は、虫を小型ナイフでバラバラに切り分け、それを私の目の前に差し出したのだ。   虫がグロテスクに変身した瞬間である。  無邪気故、なんの戸惑いもなく虫を殺したその光景に、子供の恐ろしさを身を以て体感してしまった。  まさに阿鼻叫喚。美形君が途中で止めてくれなかったらどうなっていたか、考えただけでゾッとする。  私は右足が動かせない。いつの間にか右足は添え木が固定され、包帯も巻かれていた。足が動かせないと、体もほぼ動かせない。だから逃げることも出来なかった。  助けてくれた美形君が、その時だけ本っっっっっ当にいい子に見えた。  そして現在、この部屋には誰もおらず、部屋の明かりは全て消されている。  私がいる籠は暖炉の目の前を陣取り、チロチロとした火の光は、私とその周辺だけを照らしている。  結局ご飯にはありつけず、時折お腹が鳴るのを我慢している、この状況。  美形君が三日以内にサヨナラ、と宣告した言葉が案外当たりそうで怖い。私の心の中はお先真っ暗だ。  私、明日冷たくなっていたらどうしよう…―どうしようもないか、天使の所に殴りに行くだけだ。考えることを放棄し、再び太陽を拝められることを願って目を閉じた。
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